『ねえ、知ってる?』


『学校の裏庭に咲いている桜の木の下で想いが通じ合った二人は永遠の幸せを手に入れるんだって』


(なんて、伝説がありそうでない千石高校の廊下を歩きながら貴女は胸元のリボンをきゅっと掴んだ
どきどきと跳ねる心臓、上気した頬………思い浮かべるのは黒髪癖っ毛の先輩の事だった

テスト勉強の為に利用した図書室で静かに本を読むその姿は他の学生達と違ってとても物静かで落ち着いた雰囲気に……気になりはじめたのはほんの数ヶ月前だった


本を借りる際に触れ合った指先は…自身の指と違いごつごつとしており、それなのに温かく……)



『テスト勉強だろう?
それなら…この本も借りると良いよ、この本はより詳しく書かれているからね』



(優しい声音で…片目を閉じ笑う先輩は何時もの物静かな雰囲気ではなく少しお茶目に見えたのだ


……この人がどんな人なのかはわからない、しかし気になりだしたのはその頃からだった

今日も今日とて…貴女は図書室へと足を向ける
扉の向こうには…大好きな先輩がいる
先輩はご隠居さま!