(三味線と和琴……能管の音………それと何処か背筋がぞわりとするような緊張感…
和楽器の音に合わせ舞う男と横で小鼓を叩く女………それを見守る連れであろう人達……なんとも場違いなような気がして落ち着かない
舞台の方へと目を向けると能管を吹く毛利太夫が目に入った
……横に居るのは……確か森太夫と………誰だっただろうか、無精髭が印象的だった事は覚えている
………ちらりと辺りを見るが男ばかりだ
…遊女達が酒を注いだりしてはいるものの……客の方の男臭さが目立つ…………とりあえず飲んで…待つとしよう)
(…………毛利太夫は……どうやら他の客に捕まっているようだ
上座にいる夫婦の杯に酒を注いでいる…………)
あの……
(凛とした声に思わず変な声が出そうになったが口を閉ざし振り返ると………艶やかな黒髪の…森太夫が大きく綺麗な目で此方を見つめていた)
隣、よろしいですか?
(その言葉にこくりと頷くと森太夫は横に座り…徳利を持っては杯に酒を注いできたので杯に口付けては飲んでいると森太夫はくすりと笑った)
………良い飲みっぷりですね
毛利殿から話しをしたがっていると聞いたのでお声かけしたのですが…大丈夫でしたか?
(その言葉に首を傾げていると森太夫はゆっくりと話をしていく
自分ではなく毛利殿の方が良かったのではないかだとか……髪についての話し………どれぐらい会話をしていただろう
二人で笑っては…ずっと話をしていた
歳が近く見えたからというのもあるのだろうが彼はどんな話でも真っ直ぐに聞いてくる…それが楽しかったのだろう
料理がだいぶ無くなる頃……ふと毛利太夫の事を思い出しては上座に視線を向けるが………………毛利太夫は此方に背を向けているので顔が見えない
夫婦から…何かを囁かれてはいるようだが………)
……
あの