(ばさりと布団から身体を起こしては首筋をなぞり姿見を見た
…首筋には赤い痕がついている………腕の中で震え悶えるあの姿……手に触れた尻たぶは張りがありきゅうと引き締まっていた……

想いを伝えれば受け入れても貰えた


あれは夢だろうと思っては床についたものの姿見に映る赤い痕であれが現実だった事を確認してはぼふりと身体を横たえてはごろごろと寝転がっていると外から友人の声が聞こえた


……………どうやら昼餉に誘っているようだ)
































(ずるずる、と出された蕎麦を食しては茶を飲んでいると友人が口を開いた
…最近、刀を持ち出歩く者が増えたとか……そういえば毛利太夫も最近の江戸は物騒だと言っていた何故なのかと首を傾げると箸を向けられた
こっちに向けるなと言いたいものだ)


『そりゃあそうよ
花街は欲の捌け口、大名だって来るし、物騒な連中だって来る…寧ろそうした話なら花街で聞く方がてっとり早く聞けるでしょうね』


(おい待てそれでは遊女や遊男達は常に危険なのではないかと聞くとちっちっちっと指を振られた。何とも腹立たしい奴だ)


『客は絶対に商品である遊女や遊男に手を出してはならない
それは当然の事なのよ、身請けをした所でその規則は変わらない

それにね、大門の所で刀を預かられるから傷付ける事はほぼ不可能に近いのよ』


(なるほど、だから辻斬りなどは花街に居ないのかと考えていると友人が頬杖をつき此方を見てきた)


『それにしても……まさか遊男と約束するなんてね
それも指切りげんまん………あんた約束を違えたら本当に指を切り落とされるかもね』


(けらけらと悪戯に笑う友人の黒い冗談には冷や汗しか流れなかった……)




重なる手、見つめ合う瞳