(薄暗い会場の中、男はフードを被りカウンターの前に立っていた。
注文を済ますとバーチェアに腰掛ける。

始まる前だというのに観客は振りや立ち位置を気にしていて、外の静けさとは大違いだと考える)



なぁ、ネズのライブは毎回こう…人が多いのか?


(カウンター越しに男はバーテンダーに声を掛ける
バーテンダーはその声に目を丸くした後、顔を突き出し何かを言いかけたがそれを遮るように男は口を開いた)




静かに、オレは此処ではただの客でお前はスタッフだ
客がどんなヤツか聞くのは野暮…そうだろ?



(ごくりと言いかけた言葉とともに唾を飲み込むと男は片八重歯を見せつけるかのように笑みを浮かべる。
表情の変化に安心したのかバーテンダーはグラスをカウンターに乗せると口を開いた

ネズのライブは会場を貸し切った時は常に満員で客同士なかよくなることもあるのだと…)




……仲良く、ねえ


(男は自身の考えをまとめ紐づけていくように呟き、グラスを手に取ると人込みに視線を向ける。

例えどれだけ人がいようと見つけることは容易いことだった。
メイクや服、髪型が変わろうと傍で見ていた女性を見間違えるほどこの男は愚かではない)











さて、ネズが派手にやっている間オレさまは狩りの時間だ

…歌が消える前に捕まえてやるよ



(グラスに口をつけると傾け、煽るように流し込む
ごくん、と喉仏が上下に動くのと同時に口から離すと空のグラスをカウンターに置く、その瞳はわずかにをちらつかせていた………)









シャンディーガフ