(その日はじんわりと体の芯から暑さがこみ上げてくるような日だった。
メイクが寄れないように頬をなぞる汗にハンカチを押し当て吸い込ませながら歩く。)
(…暑い。
待ち合わせ時間がいつもより早いせいか日射しも強く、いるはずのないテッカニンが鳴いているように感じる。
合流後にアイスを食べようかと考えている空に浮かぶ入道雲を見ると鼻先にぽつりと冷たい刺激)
ー ぽつん、ぽつん(雨だった。
通り雨ならすぐ止むかもしれない
それに待ち合わせ場所はもう見えてきているのに戻るのは時間がかかってしまうだろう
鞄を頭上に載せ早歩きで進む。)
(止むと思っていた雨は酷くなっていく
鞄で遮るようにしていたものの横殴りの雨に耐えれるわけがなく、出したばかりの夏服が足にへばりつく……あまり良い気分ではない)
(メイクは落ちなかったもののセットした髪も濡れてしまい肩を落とす。
先ほどまで青空に浮かぶ風船のように心が弾んでいたというのに見られることもなく崩れてしまった…)
(気分に合わせるかのように雨足は強くなる
スマホで連絡しようとするとばさ、と鞄を抑えた手に柔らかな布が触れた。
…暖かく、嗅ぎ慣れた香りが広がる)
オマエ、お互い雨に降られてしまったな

(ばっと振り向くと大きな手が肩に乗せられる
冷えた体にじんわりと暖かな体温が伝わり、温度の変化に
ぞくりと体が震えた。)