(冷え込みも厳しくなってくる12月。最近は街に出るとお店はクリスマスグッズやイルミネーションに溢れ、どこに行ってもクリスマスソングが流れている。)
(もうすぐクリスマスなんだなぁ…とか思いながら季節を感じる。小さい頃はプレゼントがもらえるからすごく楽しみだったけれど、成長するに連れてサンタさんは両親だったという衝撃的事実を受け入れたり、恋人と素敵なクリスマスを過ごすことを急かすような世の中であることを知ったりと、夢もへったくれもないイベントになりつつあった。)
(残念ながら今彼氏は居ないため、一人で過ごすか友だちとどこかへ出かけるかしかない。一瞬菊さんの顔が思い浮かんだが、「クリスマスは戦争です!商戦です!!」とか言っていた気がするからきっとお仕事だろう。)
(誰か暇な友だちいるかなぁ…)
(そんなことを考えながら携帯を見る。ふと、ロヴィーノの顔が思い浮かんだ。)
(…ロヴィーノ、クリスマスどうするんだろう…。)
(そういえばロヴィーノとイベントごとの話をあまりしたことがない気がする。だから今回のクリスマスの話も話題に上がらなかった。)
(むこうの国では家族と過ごすのが主流なんだよね…。)
(予定、聞いてみようかな…でもフェリちゃんとかと過ごすなら邪魔しちゃ悪いよね…)
(そんな風に考えながらTELボタンを押せずにいると、突然携帯が鳴り出した。)
…!
(画面には『ロヴィーノ』の文字。慌てて応答ボタンを押す。)
もしもし。
『俺だ、ロヴィーノ。』
(今まさに電話をかけようとしていた相手からの電話だ。嬉しくて、少しだけ声色が明るくなる。)
どうしたの?
『あぁ、いや…大したことじゃねーんだけど…
お前…クリスマスの予定あんのかなって思って…。』
(そう言われてはっとする。電話をかけようとしてただけじゃなく、クリスマスの予定をきこうとしてたのも同じだ。)
え、あぁ、クリスマスか…特に何もないよ。
『えっ…?』
え…?
(特に何もないと言っただけなのに疑問形で返された。どういうことだろう?)
『あ、いや、なんか日本じゃその…、恋人とかと過ごす日になってるらしいから…
お前もてっきり…』
(そう言うロヴィーノは気まずそうで、思わず笑ってしまった。)
そんな人いないよ。
(というより、私にいい人が居ると思ってたのにダメ元でかけてきたのだろうか…。)
『いや、別に彼氏がいるっつーか…そうじゃなくても誰かしらと遊びに行くと思ってたからなんつーか…』
(心無しかロヴィーノがホッとしているように思えた。勘違いかもしれないけど…。)
(でももし…もし彼氏が居たら、どんなふうに反応してくれたのだろう。)
ロヴィーノは?
『あぁ、そうだ。今年は俺んちでパーティー…つってもそんなに人数いねーけど
集まって飲もうって話してるからお前もどうかと思ってよ。』
えっ、行っていいの?
『あぁ、そのつもりで電話した。』
(やっぱり身内で過ごすんだ…。でも邪魔しちゃ悪いよなぁ…。なんて考えたけれど、どうせ今から無理矢理別の予定つくるんだったらこうして誘ってもらえる場所に甘えよう。)
(それに、他でもないロヴィーノからのお誘いだ。)
じゃあお言葉に甘えて…。
(そして日時を教えてもらい、電話を切った。)
(何も言わなくなった携帯電話を見つめて、思わず顔が緩む。恥ずかしいから言わないけれど本当はロヴィーノと過ごせるのが嬉しかった。)
(そういえば、今年が初めてだな…。一緒に迎えるクリスマス。)
(よし、と意気込みをして私はコートを手に街へとでかけた。)
クリスマスのお誘いを受ける話