何故、貴女はいつも私のところに戻ってくるのでしょうね?
(眠っている貴女の目元に触れる。)
こんなに泣き腫らして……
そんなに、あの方を想っていたのでしょうか…。
(そのまま指先を髪の毛に絡めた。)
わかっていたはずです。
実らない恋だということくらい、理解していたはず…。
なのに、貴女は何故そこまで傷つき、いっそ好きになんてならなければ良かったと、私のもとで泣く。
…それならば、かつて彼が、彼の国がしてきたことを、貴女が夢見て慕う彼がどんな生き物なのかを
縛り付けて聞かせていたのなら、好きにならなかったのでしょうか…。
(髪の毛を弄っていた指先が、貴女の首元までおりてきた。)
きっと、そんな事はないでしょうね。
貴女はそれでも、彼を好きなままでいたでしょう。
真っ直ぐで、美しく、なんと盲目な想い。
そんな曇りなき心で私のことも信じているのでしょうね、きっと。
(指先はさらに下へおり、鎖骨を撫でる。)
私は知っているのですよ。今あるこの世界と、貴女が手放しに慕う彼、そして貴女が信じる私自身がどんな風に形作られてきたのかを。
全て、見てきたのです。
(指先はそこで動きを止め、貴女から離れていった。)
(すやすやと寝息を立てる貴女を愛おしそうに見つめる。)
……本当に、馬鹿で無防備な娘だ。
ふふふ、私のもとならば、安全だとお思いで?
(そう言って笑った菊の目に、かつての帝国の色が残っていたことを貴女は知る由もなかった。)
菊がもしヤンデレだったら