港湾様2
名前:蒼龍
はみ出た九九艦爆 96機
GOODを狙っていきましょう!
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この辺りには「港湾様」という厄介なものがいる。
港湾様は大きな女の姿をしている。名前の通り港湾ほどの胸部装甲があり、「ぼぼぼぼ」と男のような声で変な笑い方をする。
人によって、白の縦セタを着た若い女だったり、メンチを切ったような風貌だったり、帽子と日傘の女だったりと見え方が違うが、
女性で異常に耐久が高いことと気味悪い笑い声は共通している。
昔、旅人に憑いて来たという噂もあるが、定かではない。
港湾様に魅入られると、数日のうち沼らされてしまう。
最後に港湾様の被害が出たのは一年ほど前。
そんなことを聞いても、全然リアルに思えなかった。当然よね。
そのうち、扶桑が一人の老婆を連れて戻ってきた。
「えらいことになりましたネー。今はこれを持っておくデース」
Kさんという老婆はそう言って、内火艇をくれた。
それから、扶桑と一緒に二階へ上がり、何やらやっていた。
山城はそのまま一緒にいて、トイレに行くときも付いてきて、トイレのドアを完全に閉めさせてくれなかった。
ここにきてはじめて、「なんだかヤバイんじゃ…」と思うようになってきた。
しばらくしてラストダンスに入らされ、第二艦隊に入れられた。
そこは装備が全部大発で目張りされ、その上にロケットランチャーが貼られており、四隅には三式弾が置かれていた。
また、鉄でできた機銃状のものがあり(高角砲などと呼べるものではない)、その上に小さな見張員が乗っていた。
「もうすぐ日が暮れる。いい、明日の朝まで夜戦から出てはいけないわ。
私も山城もね、あなたを呼ぶこともなければ、あなたに話しかけることもない。
気になるかもしれないけれど、これからは目を閉じて集積地を向いていなさい。
私たちには何も見えないけど、あなたには見えてしまうでしょうから。」
そして、大淀さんのロケットランチャーが先頭、次が荒潮の内火艇、後に私の内火艇という艦列で走り出した。
間もなくKさんが、「ここがふんばりどころデース」と呟くと、何やら念仏のようなものを唱え始めた。
「おーい、大丈夫?怖かったら無理しなくていいわよ」
「どうしたの、こっちに来てもいいわよ」
限りなく二人の声に似てるけど、あれは扶桑山城のCVじゃない。
Kさんからもらった内火艇を握り締め、言われたとおりに集積地を狙ったけど、
……なぜか薄目をあけて港湾のほうを少しだけ見てしまった。
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