「……………?」
ふと携帯が動き出す。着信を知らせる長い振動……こんな時間に?
画面を確認すると、そこには見慣れた文字が表示されていた。
【着信 那廻早栗】
「……………!」
慌てて応答のボタンを押す。絶対に切らせてなるものかと言っているかのように、強く、しっかりと。
「もしもし……!」
早栗【いつものマックの前まで来て】
「……………!?」
早栗【"本物の君"なら場所は知ってるよね?……待ってるから】
「さ、さく───」
けれど電話越しに聞こえた言葉はそれだけ。こちらが話す間も無く、早栗の声は無機質な会話終了を知らせる機械音に変化した。
「……………」
いつものマック───学校の帰りによく寄っていた場所。とりあえず何処へ寄り道するか迷った時、必ずと言って良いほど行っていたっけ。
「……………!」
まるで導かれるように携帯や財布を乱暴にポケットへと突っ込み、部屋を飛び出した。
時刻が遅いだとか服装が就寝用のラフな部屋着だとか、そんな事は一切気にせずに。
ただただ家を飛び出し、街灯が照らす深夜の道を一心不乱に走っていく。
彼女の元へ行かないと。
彼女と───早栗と会わないと。
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