「……………(オッス」

早栗「……………!」


所定の場所へ着くと、そこには一足先に到着していた早栗の姿。休まず営業している店内の蛍光灯と頼りない月明かりだけが、彼女を淡く照らしていた。
予想通り、彼女はビクビクとした挙動不審な態度。


早栗「……本当に君なの?」

「うん」


出来る限りそれが無くなるようにと穏やかな表情と声を作り上げ、小さく小さく頷いてみせる。


早栗「……本当に偽者じゃない?」

「ムフフ、偽者だったらどうする?」

早栗「……………」

「……………」

早栗「……偽者じゃなかったら、何でもする」

「ん?今何でもするって言ったよね?」

早栗「私はふざけてないよ」


ふと、彼女の言葉が力を帯びた。


「……へ?」

早栗「迷宮に居る間、ずっと願ってたんだ。殴られても良いから……何なら強姦されても良いから、ここから出してって」

「……………」

早栗「君が仮に偽者なら、まだ迷宮の中って事になるよね?だから、それは無し」

早栗「そして君が本物で、本当に私を迷宮から出してくれているなら……文字通り何でもするよ」

「……………」

早栗「君は、本当の君なの?」


射抜くような強い視線、それでいて乱暴に扱えば壊れてしまうような弱々しさ。


「……………」

早栗「……………」


ただただ怯えてる。死の痛み、永遠の痛み―――そんな恐怖と隣り合わせな時の中に身を置いてきた彼女にとって、縋りつくような想いなのだろうと。


>>
★早栗と脱出する7