「偽者じゃないよ」

早栗「……………」


落ち着いた口調で、言葉を紡ぎ出す。
彼女が安心出来るように、自分なりに考えて。


「きのこたけのこ戦争で喧嘩したり」

「背中に氷を入れたと思ったら入れ返されたり」

「たまに早栗の家まで送ったり」

「相合い傘したり」

「バレンタインのチョコレートを貰ったり」

「今までの事、全部覚えてる」

早栗「……………」

「そして何より───」


ポケットから徐に携帯を取り出す。着信履歴の画面を開き彼女に示すと、怪訝な顔をして首を傾げた。


「この携帯に早栗の着信が届いて、それに自分がしっかりと出て、二人しか知らない……いつも寄り道してるこの場所に来た」

早栗「あ……」

「十分じゃないかな?」

早栗「……………」

「……近くに行っても良い?」

早栗「……………」

「ダメなら、今は帰るから」

早栗「……………」

「どう?」

早栗「……………」


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★早栗と脱出する8