早栗「ねえ、何かあったの?」


ここから先はお互いに違う帰路、早栗との別れる場所。
周囲に誰も居なくなった所で彼女は問いかける。


「……………?」

早栗「今日の君、元気無かったよ?」


……気付かれていたみたいだ。


「……………」

早栗「……私じゃ力になれないこと?」


顔を覗き込んで来る小さな顔。自分の知っている早栗と何ら変わらないその顔へ向けて、自分は愛想笑いを浮かべるだけ。


早栗「……………」


だって、本人に相談出来るはずがないだろ?
何故早栗はここに居るの?
何故亡くなったはずの母親や妹が居るの?
……いきなりそんな疑問をぶつけられて不快に思わないはずがない。少なくとも、自分だったら嫌だな。


「何でもない」

早栗「………そっか」


ええい、何をしているんだ自分は。悩むのはひとまず後回し、早栗まで暗くなる必要は微塵も無いんだ。
きっと悪い夢でも見ていたのだろうと強引に自分を納得させ、考えるのは終わりにしよう。


「明日になれば元気になってるから」

早栗「……本当?」

「約束する」


そう、目の前に早栗が居る。
どの道考えても真相がわかるわけではないのだし、平和な日常が戻ってきた事に喜んでおこう。


早栗「うん、約束ね?」


彼女は微笑む。深い事は聞かないでおくから、必ず明日には元気になっているんだぞと言っているかのように。


早栗「それじゃ、また明日!」

「……………(コクリ」


手を振る彼女に同様の仕草で返す。しばらくはその場に留まっていたが、やがて姿が見えなくなると再び足を動かし始める。


「……………」


勿論納得なんてしていない。早栗の居なかった日々は決して夢なんかじゃなかった。
けれどその様に結論付けるならば、今日過ごした一日は何だったの?
それこそ、今この瞬間が夢なの?
早栗の存在するこの時が―――


「……………(グゥー」


……マック行くか。
☆儀式の翌日2-2