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雪が、降っている。
見えるわけではないが、体に落ちてくる冷たい感覚でそれを感じる事ができる。
外で寝ているのか、自分は…
寒い…
早く、起きて家に入らないと、風邪をひいてしまう。
なのに体を起こすどころか目を開けることも出来ない…
それにここは本当に家の外なのだろうか、近所の犬の鳴き声すら聞こえない。
恐怖を覚える程に静かなこの空間には自分一人しか存在しないのではなかろうか…そんな錯覚を覚える…
体に雪が積もっていく。
声を出すことは出来る。
喋っていれば誰かが気付いてくれるだろうか。
だが、そんな思いも虚しく…自らの口から零れる言葉はただただ夜のシジマに吸い込まれていく…
寒い…
このまま誰にも知られる事なく凍えて死んでいくのか…
ふと、気付く。
誰か---いる。
自分のすぐ近くに。
何故かは分からないが直感的にそう感じた。
意識を集中させ、毛ほどではあるが目を開くと…
仰向けで寝ている自分の枕元にしゃがみこんで、じっとこちらを見下ろしている誰かがいる。
声をかける
その人は何も答えない。
助けを求める
その人は何も答えない…
ただの幻影なのか…
動く事も起きる事もできないこの空間で、やっと誰かを見つけたと思ったのに…
そう思って全てを諦め、再び眠りにつこうとしたその時---
ふわりと
冷たくなった頬に温かい何かが触れた。
『すり…すり…』
…撫でられている。
やっぱり誰かがいたのか、幻影などではなく。
生きた、実体を持った誰かが。
『すり…すり…』
反対の頬も同様に撫でられる…
なんとも丁寧で優しい撫で方だった。
撫でられているだけでいかに自分がこの人物の寵愛を受けているかが分かる…それ程に。
実に、心地よい。
このままずっと、こうされていたいぐらいに…
『とん、とん』
…起こそうとしてくれているのか。
『とん、とん』
あぁ…だけどこんな刺激でさえなんとも心地よい。
寝ていればずっとこうしていてくれるのなら、ずっとこのまま---
『バチンッ!!!』いっ---
突如頬に電撃のような痛みが走る。
それはどこか懐かしくて、同時に脳と体を覚醒させるには十分すぎる衝撃だった。
飛び起きる。
思ったとおり、そこは雪が降っている暗い空間だった。
周りには建物も一切無い、ただの広い空間。
狭いようでいて、どこまでも続いているように見える、そんな場所。
風すら吹いていない。
ここに存在しているものは自分と
目の前にいる人物だけだった。
「………。」
女性だった。
その人は何も言わない。
ただどこか懐かしい真っ直ぐな瞳でこちらを見つめるだけ…
ともあれこちらの呼びかけに応じて起こしてくれたのだから礼を言わなければ。
そう思って立ち上がろうとすると
その人はぽつりと
「これ…」
そう言って何かを取り出した。
箱、だった。
綺麗に包まれた。
それはまるで---

「甘さ…少し抑えといた。」
それだけ言うと箱をこちらに渡して
背を向けて歩いて行ってしまう。
『ジリリリリ…』遠くから音が聞こえる…
どんどん離れていくその背中を見ていると
やがて視界は真っ白になった。
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