もう少しこの飲み屋街を回ってみる事にしよう。
何か新たな発見があるかも知れない。
ここ飲み屋街は夜になると酔っぱらいや筋者達のせいで若干治安が悪くなるものの昼は学生達の絶好の遊び場らしい。
今日はバレンタインデーという事もあり、いつもより大勢の学生達で賑わっている。
少し居づらい気もするがまだ帰るには早いので色々な店を覗いてみようか。

三世「ねえ御堂、何故今日はこんなにも人が多いのかしら。」

景明「今日は…確かバレンタインデーだったか…成る程、この賑わいも納得がいく。」
三世「ばれん…何って?」
景明「バレンタインデーだ。男女にとって特別な日、そう認識している。」
三世「どんな日なのかしら?」
景明「確か…む?あそこにいるのは…
丁度いい、実際にやってみた方が早いだろう。」
売り子「いらっしゃいませー。」
景明「失礼、この菓子を一ついただけますか。友人に贈る物なので包装もお願いしたいのですが。」
売り子「かしこまりましたー。」
三世「何を買ったの?」
景明「贈り物だ。村正、あそこに○○さんがいる、日頃の礼の言葉とともにこれを渡してきてはどうだ?」
三世「? 御堂が渡せばいいじゃない、貴方が買ったんだから。」
景明「今日に限ってはお前から渡す事に意味がある、早く行かなければ見失うぞ。」
三世「…諒解。」
…あまり面白いものはない、どこもかしこも似たような光景だ。
仕方がないか、そういう日なのだから。
そう思って移動しようとしたその時…

三世「…こんにちは。」
意外な人と出会った、こんな所で会うなんて。
一人で散歩でもしているのだろうか。
三世「いいえ、連れはあそこにちゃんといるわ。」
村正さんの指差した方向、80mほど先に湊斗さんがいる。
成る程、二人でここに来ていたのか。
三世「貴方はどうしてここに?」
学校が早く終わり、早く帰っても退屈なのでぶらぶらしている事を伝える。
三世「そう。
つまりやる事がなくて暇してたって事かしら。」
そうとも言える。
三世《御堂…どのタイミングで渡せばいいのかしら。》
景明《別に好きな時で構わん、渡されて困る男性はいないはず…だが。》
三世「あの…貴方には日頃からお世話になってるから、これを受け取って欲しいの。」
村正さんは綺麗に包まれた箱をこちらに手渡す。
もしかしてこれは…
三世「私にはよく分からないのだけど…御堂が私から貴方にこれを渡せって。
それに貴方にお世話になっているのは事実だから。」
これの意味が分かっていないのか、村正さんは照れる様子もなくそう告げる。
こちらからもお礼を言おう、世話になっているのはこちらとて同じことだ。
そしてお返しも楽しみにしていてほしい。
三世「お返し?ますますよく分からない習慣ね…。
とにかく、ちゃんと渡したから。
それじゃもう行くわ、またね。」
それだけ言って村正さんは湊斗さんの元へ戻っていき、湊斗さんはこちらに礼をした。
こちらも手を振る。
別れの挨拶が済み、二人は人混みの中へと消えていった…
これは村正さんからなのか、二人からなのかは分からないがともかくここでもチョコを貰うことは出来た。
次はどうしようか。

三世「それで、結局あれはどういう意味を持つものだったの?」

景明「言いそびれていたな。
あれは異国から伝わった習慣で、女性が意中の男性に菓子を贈る、というものだったらしい。」

三世「なっ…!?貴方そう言う事はもっと先に教えなさいよ!何食わぬ顔で渡しちゃったじゃない!」
景明「世話になった事には変わり無い、お前もそれで諒解したはずだが。」
三世「それはそうだけど…私にだって…
それに---
言わなきゃ分からない訳じゃないでしょう?」
景明「…………。」
三世「あれで彼が、もしも私たちに…」
景明「…軽率だったかも知れんが、問題無い。こちらから必要以上に接触を試みなければいずれ忘れるだろう。」
三世「お返しがどうとか言ってたけど。」
景明「………。」
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