『ガタン…ガタン…』
…電車の揺れで目を覚ます
体が痛い…座面にたいしてほぼ直角の背もたれは長旅の疲れを癒すには些か役不足なようだ。
外は真っ暗…
随分と長いトンネルをくぐっているようだ。
とは言っても自分は先程まで寝ていたので長い、と言うのも可笑しな話だが。
電車には自分以外の客はほとんど乗っていない、まあ、このご時世電車に乗るにも結構なお金が必要になるためこの光景は寧ろ自然なものと言える。
親の仕事の都合で親戚の家に預けられる事になったため昨日まで引っ越しの準備をしていたのだが…
その親戚というのも鎌倉での仕事が大変忙しいらしくほとんど家を使わせて貰うだけの一人暮らしに近い。
この歳で一人暮らしもどきをする事になるとは思わなかった。
これから自分が向かう場所は鎌倉…現在の大和国において実質上の首都であり、かの六波羅幕府のお膝元。
現在、つまり国紀二六〇〇年、外暦一九四〇年。
大和国は六波羅幕府に支配されている。
六波羅…鎌倉には普陀楽城なる要塞を作り上げその周囲地域には四公方を配置、関東一帯を軍事基地と化しそこから大和全土を掌握している巨大勢力。
…と言ってもGHQの監視下で、だが。
つい昨日まで住んでいた町では夜だろうが平気で出歩く事もできたがここ鎌倉では夜になると幕府の警備組織、鎌倉大番なるものが巡回しだし夜は外出すらままならないらしい。捕まれば一晩拘留、最悪軍施設行きだとか…。外出を好む自分にとって夜出歩けないのはもどかしい。
…だがそれよりも今心配なのは…やはり新しい学校生活だろうか。
新天地での学校生活…正直不安を隠しきるには無理がある。
色々考え事をしているとようやくトンネルを抜ける。
《え~次は~鎌倉~、鎌倉~、鎌倉で御座います。お降りのお客さまはお忘れものの御座いませんように…》
…そろそろ時間のようだ。
荷物を持って降りる準備をしよう。
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