おっと、今日は君か…うむうむ、歓迎しよう!さぁさぁ上がりたまえ!あ、ちゃんとうがいと手洗いをするのだぞ?ちゃんとできたらすももの汁で乾杯といこう!いかない?あ、そう…

よしよし、なにかお話してあげよう…そうだな、あれはちょうど10年前だったか…
グラーフ・ツェッペリンという艦娘がおったそうな…ビスマルクやプリンツと同じドイツの艦でな?進水はしたが艤装が完成に間に合わず終戦を迎えたという、艦娘の中でもなかなか珍しい経歴の持ち主だ
見た目は金髪でクールな美女といったところだが、蓋を開けてみれば情が深く、着任してからというもの秘書艦を務める際には甲斐甲斐しく提督を支えていたのだよ

とある日の深夜、そろそろ仕事を切り上げて休息を取ろうと提督に提案したグラーフだったが、提督はまだ仕事が残っていると言って執務室に残ったのだ
グラーフも手伝うとは言ったのだが、提督にしか出来ない仕事であり量も多くないから先に休んでくれと言われれば従うしかない
だがそこは気が利くグラーフ・ツェッペリン、彼女が淹れるコーヒーは提督も大のお気に入りで、夜遅くまで頑張る提督にせめてもの差し入れとして熱いコーヒーを淹れてあげたのだ

自分が淹れたコーヒーを飲んで「美味しいよ、グラーフ」と言ってくれる提督の笑顔がなによりも好きな彼女がコーヒーを片手に執務室の扉をノックしようとして…その手が止まる
どうやら提督の他に誰かが執務室に居るらしい…音を立てないようにそっと扉を開けて飛び込んできたのは…

服をはだけさせ自らの豊満な乳房を提督に押し付ける自分と同じドイツ艦…ビスマルクとプリンツだったのだ

彼女達の騒動はグラーフも知っていたし、好意を抱いているのも知っていた
提督のワイシャツを洗濯する際にその匂いを嗅いでいるビスマルクや、新品のワイシャツにすり替えて部屋に持ち帰るプリンツの姿を目撃していたし、なにしろ自分自身同じことをやっていたのだから当然分かっていることだ
だがまさか深夜に堂々と執務室でヤッているなんて思いもしなかったんだろうな
ふるふると身体をわななかせ、そしてグラーフは思いっきり叫んだ

「ずるい!二人ばっかりずるいぞ!!」とね

普段のツンと澄ました表情だとか、ドイツの誇りだとかをかなぐり捨てて、まるで好きな男の子を取られた女の子のように指を刺して半泣きになるグラーフを見て、流石にビスマルクとプリンツもバツが悪かったのか彼女に近づいてなにかをこしょこしょと耳元で囁くと、グラーフもひっくひっくとすすり泣きながらもしきりに頷いていたよ

そして二人に連れられて提督の前に立ったグラーフが服を脱ぎ捨ててこう言い放った

「彼女たちばかりずるい、私も同じようにしてくれなければ許さない」とね


ところで話は変わるが、君は友人達とカラオケに行ったことはあるかな?大勢でカラオケに行くと一人くらい居るんだが、マイクを握るとなかなか離さないタイプの人間がいるだろう?グラーフもそのタイプなのだ
まぁ握って離さないのはカラオケのマイクではなく、提督のマイクだったのだがな!HAHAHA!

最初はグラーフに譲っていた二人だったが、2回3回と回数を重ねるうちにそろそろ交代だと騒ぎ始めたのだ
だが提督から引き離そうとすると、まるでグラーフが獣のように凄い目で睨みつけるので諦めるしかなかったのだ
どれだけ温厚な犬でも食事中にちょっかいを出すと怒るものだからな、グラーフが満足するまで彼女達も大人しくしているしかないと悟ったのだろう

こうして結局、精魂尽き果てた提督といろいろ吹っ切れて輝くような笑顔のグラーフが執務室から出てきて波乱の夜は終わった
おそらくこの時にクリティカルヒットして生まれたのが君だということだ、提督とグラーフの子よ

…ってああ!それは私の取っておきのスコーン和風バーベキュー味!あぁぁ…私の今日のオヤツが…
10年後のグラーフ