掃除は思ったより早く終わった。今でもまめに手入れをしてくれている人がいるんだろう。
線香をあげて、今朝採ってきた果実を供える。
もう一度手を合わせて、深く目を閉じた。
線香の香りに誘われて、色々な記憶が蘇る。匂いと思いはよく似ている、とは彼女の言葉だ。
思い出すとめそめそ泣いてしまいそうな自分が情けない。
…………お盆の時くらい帰ってくればいいのにな。
そう思って、ふふ、と笑った。きっと彼女も同じように笑っただろう。あの人を小馬鹿にしたような笑みで。
道具を片付けて、帰るとしよう。
またな、と声をかけてから立ち上がる。
すると、背後から知った声で
「○○さん」と声をかけられた。
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