振り向けば、そこには浴衣姿の妻がいる。

「終わりましたか? わたしも阿求さんに手を合わせたいのだけれど……」

 ああ、ありがとう。そうしてやってくれ。

 そう答えると、彼女も俺の隣に佇んで手を合わせた。
 しばらくしてから彼女は「行きましょうか」と立ち上がった。二人で並んで歩き、墓地を後にした。

 線香の匂いと、涼しげな空気がしんと残る。
 縁起が悪いので、振り向かないことにした。


墓参り3