大尉や提督たちが訓練だ会合だと慌ただしくしていたある日。私はというと、いつものように一通りの家事を済ませ、飛龍から近い砂浜へ来ていた。
こっちに来たばかりの頃は飛龍の中をウロウロと見て回っていたものの、危険物がそこいらにあるからか、次第に奥へ行くことを遮られるようになった。今では大人しく本を読んだり、こうして外に出たりしている。
どこにでも自由に行けるわけではないけれど、どこかに行けるという事実だけで心が落ち着く気がする。
…とはいえ日傘があるだけマシというような暑さはもう少しどうにかならないのだろうか。影から少しでもはみ出せば、ギラギラと焼け付くような日差しが肌に突き刺さる。今なら飛龍の甲板に卵を落とせば目玉焼きができるかもしれない。絶対、大尉に食べ物で遊ぶなって怒られるからやらないけど。
海の色も、寄せては返す波の音も、元の世界のものと一緒だ。でも、この水平線の向こう側のどこにも私のいた場所はない。それは大尉も提督も同じ。
大尉は私に希望を捨てさせないようにしているけれど、正直なところ、元の世界に帰れるとは到底思えない。
もしも、もしも帰れるとしたら。大尉は。
大尉は、帰りたいのかな。
(―――
帰りたい?
)
(「ああ」)
……帰りたいよね。
前聞いた時もそうだったもの。
「おい」
名前:空神様
46歳
GOD
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