いきなり声をかけられて、思わずひゃん、と情けない声をあげてしまった。


「あー…悪い。驚かすつもりは無かったんだがよ。なんだっけ、そうそう、てーとくがスイカっぽいやつ貰ったから食おうってさ。帰ろうぜ」


大尉はシャツにスラックスという普段よりも涼しそうな装いだった。
びっくりしすぎていつものつなぎじゃないんだね、とただ頭の中に思い浮かんだことを口走ってしまう。暑いからな、と笑う彼の額には汗がにじんでいた。



ねえ、大尉。


「ん?」


大尉は帰りたい?









「お前がここにいる限り、俺は帰らん」

そう言って、大尉は私の手を取った。
少し汗ばんだ掌。
暑いとぼやきながらも絡めてくれる指。
私が力を込めただけ、彼も握り返してくれる。

「早くいこーぜ。てーとくたちが待ってる」

砂を踏みしめながら、いつだったか、大尉が貸してくれた本に書いてあった歌を思い出す。


いのちなき 砂のかなしさよ
さらさらと 握れば指の あひだより落つ




一人がだめなら二人で、しっかりと握りしめていよう。この幸せが砂のようにこぼれ落ちていかないように。

名前:空神様
46歳

GOD

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