〇月〇日 天候:晴れ
 朝5時夢を絶つ。頬を抓ってみると確かに痛みを感じた。
 どうやらこの状況は夢ではなく現実のようである。ドラゴンやら犬人間やら見た時は走馬灯を越えて空想の世界を見せているのではないかと思ったが、こうして寝て起きることができたのだから我が頭脳は至って正常だ。
 さて、これからどうするべきか。とりあえず安全を確保しつつ帰還する方法について考えねば。



(これは、日記だ)
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〇月〇日 天候:雨後曇り
 朝、昨日の残りの煮付けを食す。
 新しい食事を用意されたが、残ったものから食べねばならないと思い彼らに返す。今から思えば悪いことをしたかもしれぬ。やはり細かい意思疎通は言葉を介さないと難しい。早く言葉を覚えねば。紫電改の点検に午後を費やす。予想よりも状態は良いが飛べるわけではない。
 未だ帰還の方法を思いつけない。
来れたのだから帰れるとは限らないが、まだ諦めるわけにはいかない。





〇月〇日 天候:快晴
 単語の意味は大体察することができるようになってきた。しかしまだまだ会話を行うには程遠い。肉体言語のほうが早いと感じてしまう。
 食事を終えこれからの方針について考えを巡らせていると見慣れぬ金髪の男が我の愛機に近寄らんとす知らせを受け取る。言葉が通じないどころか変な微笑みでこちらを見る。よく分からん老人だ。羅馬と言っていたのでどうやら伊太利人のようである。独逸に謝れコノヤロウ。





〇月〇日 天候:ニワカアメ
 少し離れた場所に展開した部隊から、見慣れぬ人間を発見したとの報を受け現地に向かう。
 成人女性というよりも少女に近いその人は、日本人だった。言葉が通じる喜びを噛みしめつつ彼女に幾つか質問をする。聞き慣れない言葉がいくつかあったが何よりも驚愕したのは、自分が21世紀からやって来たのだと言ったことであった。
 日本はどうなったのか、家族は、俺は向こうに帰れたのか。聞きたいことは沢山あったが、彼女が未来の日本人であるという事実だけあればもうそれ以上追及する必要もないだろう。「日本が21世紀にも存在する」それだけで。

……もしかしたら俺は知るのが怖いのかもしれない。
もう2度と向こうには帰れないということを。





カタン

名前:空神様
46歳

GOD

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